こんにちは!
1級FP技能士のアシまるくんです。

第1章『現場からの悲痛な叫び』

さて、皆様はこちらのニュースはご存じでしょうか?


昨今、話題の"探究学習"ですが、教育の現場で歪みが生じ、悲痛な叫びが聞こえてきている、といった内容です。私が気になった部分をピックアップしながら私なりに記事を要約すると、

・"探究学習"に取り組む中高生から専門家への問い合わせが増えている。
・専門家にとっては業務外の対応である。
・中高生は(当然ながら)学習の内容についてよく理解した上で問い合わせをしているケースが多くないため、専門家とのやり取りで齟齬が生じる。
・また、期限設定なども一方的なものが多い。
・高校教員が伴奏すべきだが、高校教員もみなが経験値があるとは限らない。
・入試における公平性も懸念される。

ざっと、こういったところでしょうか?

私自身も以前の記事で、探究学習について少し触れましたが、その時はあまり考えず"なんとなくよさそうだな"程度で書いてしまったので、書いたものの責務として、この問題について考察してみようと思います。


第2章『ときめく心と耐え忍ぶ心』

さて、探究学習とはそもそも何者なのでしょうか?どうやらはっきりした定義づけめいたものはなく、東京大学のリリース記事によると、

教育現場における探究学習の実状はきわめて多様であり、その実態把握も必要とされています。

と、本田由紀教授がコメントされています。

(毎度おなじみ)文部科学省の学習指導要領を確認してみると、

総合的な探究の時間は,自己の在り方生き方と一体的で不可分な課題を自ら発見し,解決していくような学びを展開していくことを重視している。

といった記載があります。

"うーむ、難しそうじゃ。"(*2)

私は常々申し上げておりますが、"学習はワクワクしてこそ"です。ワクワクが欠けてしまったら、それはただの修行です。一方で、そんなに楽しい時間だけを過ごすわけにはいきません。真の楽しさを味わうためには、そのための"知層"(知識の地層)を創り上げるために耐え忍ぶ時間が必ずついてくることになります。

その上で、探求学習について考えます。かつて"生き字引"と呼ばれる方々が重用された時代とは違い、いまや多くの知識にネットで簡単にアクセスできる時代です。しかも、現状では高度な知識となるとまだ難しいですが、基本的・初等的な知識であればAIの方が圧倒的に早く答えが出せます。もっとも精査についてはまだ人間が介入すべきですがね笑

そんな時代に、自分で問題提起をし、未知の問題に対して調べ、考え、解決する、という経験を10代のうちにすることは非常に有意義であると思います。

また、好奇心はワクワクの源泉であるので、好奇心ベースで始まる探求学習はその点がとても良いと思います。しかし、好奇心の大きさは人それぞれであり、大人になっても"やりたいことがない"とおっしゃることが多い世の中で、人生経験の少ない高校生に"さあ、やりたいことをやりなさい!"と言っても難しく感じる方が多いのではないでしょうか?

(*2)カードゲーム『デュエルマスターズ』には、コロコロコミックの人気漫画『でんじゃらすじーさん』とコラボしたカードで"うーむ、負けそうじゃ。"と言えば、その瞬間に負けることができるカードがあります。"なんやねん、そのクソカード!"と思いきや、"負けたほうが勝ち"というローカルルールがあるらしく、そのルールでは強すぎて禁止カードに認定されているようです笑


第3章『未来の学び場を整えるために』

結局、探究学習においては、好奇心の粒度に合わせた、個々人の能力を踏まえた上での適切な課題設定がカギになります。みんながみんな大学の専門家レベルの助けがいる課題に取り組む必要がないどころか、そんな課題に取り組むのはごく少数で良いと思うのです。

しかし、適切に課題設定をした上で、適切な手法で探求していくには、適切な伴走者が必要です。高校生では適切な手法が判断できない場合、頑張って調べれば分かることも安易に大学の専門家に問い合わせる可能性もあります。そこに悪意はありません、むしろ一生懸命さがゆえの暴走の結果とも考えられます。

では、適切な伴走者は誰が担うべきでしょうか?私はAIにはそのポテンシャルがあると思います。しかし、そのためには、AIに使われる人間でなく、AIを使える人間が必要です。結局のところ、AIを正しく普及させることが、ゆくゆくは探究学習の普及につながるように感じるのです。

また、探究学習について別の疑問点もあります。本来、大学とは研究機関であり、強い好奇心と能力をもつ者が専門性の高い内容を学びに行く場(*3)です。決して、就職予備校ではありません。それを探究学習の名目で、専門家の知恵を無制限に前借りできてしまうと、"学費っていったい何なんだ?"という新たな不満のタネになります。入試の公平性もそうですが、こういった観点での公平性も気になりますね。

最後に、少々年寄りじみた苦言です。対応されている教育機関もあることとは思いますが、探究学習を取り入れる場合は、ビジネスマナーについて、AIに丸投げせずに授業の一環で取り入れてほしいものですね。

探究学習自体のポテンシャルは高く評価しているので、適切に広がっていくことを期待しています。

(*3)そうは言っても、やりたいことが分からない高校生が多いのが現状だと思うので、それを見つけるために大学に通うという選択肢自体はむしろ推奨しています。ただし、目的意識が低いまま大学に入ると、溢れんばかりの誘惑に惑わされてしまうので、小さいものでもいいので目標がしっかりあることが大切ですね。単位落とさない、とかそういう消極的なものでない目標がね。