2025年12月18日、さいたま新都心の「渋沢MIX」にて、CDLE埼玉主催のAIイベントが開催されました。会場にはAIに興味がある幅広い世代の方々が集まり、AI活用の実践を共有する学びの場となりました。
司会:多喜 脩文(ITコンサルタント)@しゅーもん_core.member
まず、司会の多喜さんによる会場のウォーミングアップからスタート。参加者との軽いやり取りを交えながら、終始あたたかく進行されました。
■ 第1部|基調講演
AIコミュニティがつなぐイノベーションのカタチ 〜 なぜ今、AIコミュニティなのか? 〜
登壇:伊東 弘人(建設コンサルタント)@Hiro
基調講演ではまず、「AI時代においてコミュニティが必要となる背景」が整理した上で、コミュニティとは、“共通の関心や価値をもつ人々が相互に学び合い、信頼や文化を育てる集合体” として定義されると説明。
続いて、AI技術の更新サイクルが「週単位」へと高速化し、個人が全てを追うことは事実上不可能になっている現状が提示され、「AIのキャッチアップは個人戦から団体戦へ」 というメッセージとともに、YC、OpenAI Developers、Hugging Face、Ethereum など、世界の主要なAIエコシステムが“コミュニティ中心”で進化している点を示しました。
さらに、あるYoutube動画を紹介しながら、コミュニティをつくるうえで最も大切なのは、 “自分自身が最初のフォロワーになる勇気” であると強調。 「一緒にやってみたい」「知識や技術を共有したい」と思うなら、その気持ちを言語化して発信することが、コミュニティを動かす最初の一歩になる——そんなメッセージを伝えました。
最後に、CDLE埼玉の役割として「AIを知る・使うきっかけをつくる場」であることを説明。コミュニティが地域にもたらす価値を提示しました。
■ 第2部|LT会
AIコミュニティで始めたい新しい挑戦! 〜 私たちが次に“ともに”起こすアクション 〜
[LT①] AIは効率化ではなく、“開発プロセスの再定義”をもたらす
登壇:矢野 伸一(ITエンジニア)@Yano_core.member
矢野さんは、Claude Code・CodeX などの高度なコーディングエージェントを実務で活用した経験を紹介。要件説明 → プロトタイプ生成 → 改善 → バグ検証まで AI が関与し、初期段階の試行錯誤が大幅に軽減された事例が共有されました。
また、
・書き始める前にAIへ相談
・実装案を複数提示
・差分検証でミスを早期発見
といった新しい働き方が生まれていると紹介。 「AIによって“開発という概念そのもの”が再構成されつつある」 という視点が印象的なLTでした。
[LT②] AIは“思考の相棒”へ──意思決定と企画の質を高める活用法
登壇:野村 康次郎(経営コンサルタント)@JACKAL
野村さんは、経営企画・調査・戦略立案の現場で AI が果たす役割を、実際のワークフローに沿って紹介しました。 NotebookLM の「資料読解・要点抽出・仮説生成」、ChatGPT の「構成案づくり・論点整理」、Gemini の「調査比較」など複数モデルを組み合わせた実務例は非常に具体的でした。
特に100ページを超えるレポートも NotebookLM で瞬時に要約できる点が示唆的で、 「AIは文章を作る道具ではなく、思考を支える“相棒”になる」 という言葉が参加者の共感を呼びました。
[LT③] 教育×AI──学生の才能を支えるために必要な“コミュニティの役割”
登壇:木村 康英(ITコンサルタント)@やち(木村)
木村さんは、教育AIサミットやU-18全国大会、大学講座などの運営経験を通じ、教育現場のリアルを紹介しました。高度なAIプロジェクトを進める学生が増える一方で、「AIに触れたことがない学生」も多く、ギャップが大きいことを指摘。また、G検定学習が“体系的にAIを理解する入口”として有効である点が、複数の事例をもとに説明されました。
さらに、学校だけでは支えきれない“AIリテラシー支援”をコミュニティが補完していることを紹介。 若い世代が安心して質問し、挑戦できる場としての価値が丁寧に語られました。
[LT④] 研究現場の“暗黙知”をAIで可視化し、継承する挑戦
登壇:原田 善之(材料研究者)@東北よっしー
原田さんは、材料研究の現場で AI を活用したリアルな事例を紹介しました。 実験装置のログ解析、手順書や仕様書・論文のRAGによる構造化など、実務に直結した内容が続きました。特に若手研究者の育成でボトルネックとなる“熟練者の暗黙知”に着目し、AIで再現性を高める取り組みが始まっている点は大きな示唆でした。
「研究は人に付く。しかしAIによって“知が場に残る仕組み”を作れる」 という言葉は、研究現場の未来を感じさせるものでした。
[LT⑤] 2026年:CDLE埼玉が実施する具体アクション
登壇:伊東 弘人(建設コンサルタント)@Hiro
最後に、2026年にCDLE埼玉で進めたい取り組みが提示。
* 地元企業・行政・商工団体とのAI×地域課題の意見交換会
* 産業テーマ別セミナー(半導体/建設/教育 など)
* 学生向けAI基礎講座(G検定学習支援)
* 大学と連携した「AIアカデミー」構想
これらを「産・官・学・市民が混ざり合う埼玉型AIエコシステムの構築」として位置づけ、地域に根ざしたAIの実装を進めていく方向性を示しました。
■ 第3部|パネルディスカッション
パネルでは、LTの内容を踏まえた質疑応答が中心となりました。
主な質問は、
* AIを使っていく組織へ転換するために必要なことは?
* AIコミュニティが地域発展にもたらす役割は?
* AIで若手の“経験不足”は進むのか?対策は?
といった実務的テーマが並び、各登壇者が自身の経験から具体的に回答しました。
■ おわりに
今回のイベントは、
第1部:なぜコミュニティが必要かという“背景の理解”
第2部:5名の実践者による“具体的な挑戦の共有”
第3部:パネルディスカションでAIコミュニティでの取り組みの深掘り
という構成で、AI活用の今を多面的に捉える機会となりました。AIはもう「個人で追う時代」ではありません。
これからは、コミュニティという仕組みを通じて、学び・挑戦・知見を共有していく時代です。CDLE埼玉は2026年も、“地域から始まるAIの挑戦”を継続的に後押ししていきます。 次のイベントで、また新しい挑戦をともに生み出していきましょう。
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ℹ️ 次回のイベントのご案内 ℹ️
CDLE埼玉では、学びを“次の実践”につなげる場として、2026年1月9日に「AI×半導体」をテーマにしたセミナーを開催します。🎉
AI時代の半導体フロンティアは埼玉にある
──ハードウェアからクラウドまでつなぐ知と産業
生成AIやLLMを支える半導体技術は、今や産業・研究開発・地域経済に大きな影響を与えています。熊本・千歳が注目される一方、埼玉にも鳩山の先端露光技術拠点、和光の半導体・量子・ナノテク研究群、挑戦する中堅・中小企業など、“次の産業の芽”が広がりつつあります。
本セミナーでは、
①半導体の基礎構造
②AIインフラとしての役割
③地域産業への広がり
を、研究者×実務者の視点でわかりやすく解説します。
【開催概要】
日 時:2026年1月9日(金) 19:00〜20:10
会 場:渋沢MIX(現地のみ)
主 催:CDLE埼玉
参加費:無料(事前申込制)
定 員:50名
申し込み方法:connpassから申し込みをお願いします。
【プログラム】
第1部 講演(原田 善之/材料研究者)
「半導体とは何か?──AIを動かす頭脳のしくみ」
第2部 講演(山口 佳紀/IT Architect)
「進化するAIインフラ──クラウドと最先端チップ」
パネルディスカッション
「AI×半導体は地域をどう変えるか?」
原田 善之 × 山口 佳紀 × 伊東 弘人(モデレーター)
AIの未来を支える“半導体の本質”を、埼玉の視点から深掘りする90分。
今回のイベントに参加された皆さまにも強くおすすめできる内容です。
次回も、皆さまと新しい挑戦をつくれることを楽しみにしています。


