こんにちは!
1級FP技能士のアシまるくんです!
第1章『突然現れたナイジェリアの年金』
先日書店に行ったところ、次の本が置いてありました。
ボビー・オロゴンの投資哲学...申し訳ないですが、見つけて一番最初に思ったことは、
"誰をターゲットにした本やねん!"というツッコミ。
とはいえ、目には留まったので、手に取りページを開いてみると、そのページには私の興味ど真ん中のことが書いてありました。
"ナイジェリアに年金はない"
What's!?
理由は納得。子だくさん社会だから世代間扶養が成立する。
そこからのボビーの教えは"親を大切にしろ"でした。
社会モデルが違えば、社会保障を全く異なるものとなることを感じられるいい例でした。やはり、日常の些細なところに面白さというものは転がっていますね。
とまあ、たまたま年金で面白い話を目にしたことに加えて、国の方でも少し動きがあるので、年金のガバナンスを考えつつ、AIガバナンスに応用できることはないかなー、と小考しましょうよ、というのが今回のモチベーション。
第2章『そんなこと言われても困ります!』
ここから話すのは年金と言っても企業年金、つまり、退職金の話です。そして、最初に謝っておきますが、分かりやすさのために厳密性を少し犠牲にします。真面目に話そうと思うと、フェルマーよろしく、本当に余白が足りない。
さて、退職金のイメージと言うと、
"はい、あなたは40年働いたから退職金2,000万円ね"みたいなイメージが近いのではないでしょうか?これは確定給付型の設計で、あらかじめ会社が払う退職金を決めておきます。
最近は確定拠出型、いわゆるiDeCoの企業版がどんどん増えて(*1)きました。つまり、
"毎月27,500円ずつあげるから自分で運用して増やして受け取ってね。毎年2.0%で運用できたら40年で2,000万円になるよ"というものですね。
これを聞いてどう思いましたか?
"じゃあ、毎年利回り5.0%で回せれば、4,000万円もらえるやん!"と思うのか、それとも"そんなもん運用しろなんて無責任に言われてもやり方もよう分からんで困る"なのか。
ガバナンスとはざっくり言うと、健全な組織/制度運営のための行動です。企業年金の健全な運営とは、老後にちゃんと年金がもらえることがまず来るので、後者の"困る"と感じる人々に焦点を当てる必要があります。そのために、企業年金を実施する会社にはこの困惑を感じる方たちに運用について指南する義務があります。これが"投資教育"(*2)です。
また、最近、"企業年金の見える化"という動きが厚生労働省から立ち上がっています。これは企業年金に関する情報を一般に公開することで、従業員(将来の従業員も含む)が自社の企業年金への理解を深めるとともに、他社との比較を容易にし、よりよい運営につなげることを目的としています。現在は、議論を詰めている段階で、2027年度中にシステムの稼働開始を目的としています。
"投資教育"と"企業年金の見える化"から私が共通して感じるガバナンスを考えるキーワードは"従業員の当事者意識の醸成"です。年金の(将来の)受給者たる従業員が制度に関する知識や情報をしっかり入手できる環境を整備することで、制度への関心を醸成するとともに当事者として運営に参画してもらうことで健全な運営を目指しています。
(*1)これだけ書くと、確定拠出年金が新しい制度に見えますが、実は、確定拠出年金法は2001年スタート、確定給付企業年金法2002年スタートなので、現在の制度に関していうと、確定拠出年金の方がちょっとだけ早いんですよね。ただ、確定給付企業年金は前身となる税制適格年金制度や厚生年金基金制度があるので、やっぱり確定給付型の退職金という点ではこちらの方が歴史があります。
(*2)会社側も投資教育しろと言われても難しいものですが、だんだん社会全体でノウハウも蓄積されてきました。制度発足時は日本の確定拠出年金全体で半分くらいの資産が定期預金で運用(?)されていたのが、2023年度末で67%が投資信託となり、運用リテラシーの向上が窺って取れます。ちなみに、デフォルト商品をローリターンの商品に設定する、といういわゆる"ナッジ"と呼ばれる工夫が令和に入ったくらいから徐々になされるようになり、それも寄与していることとは思いますが、本格的に話すと長くなりすぎるので、一旦ここまで。
第3章『ゆるふわAIガバナンス論』
AIの健全な運営って何でしょうか?
例えば、業務利用を考えた場合、ぱっと思いつくだけでも、入れる情報が情報漏洩にならないか、誤出力(ハルシネーション含む)が実損を出さないか、AIで作成したツールの著作権はどうなるのか、悪意のある外部から攻撃されたらどうするのか、etc...、これらが全てクリアされている(もしくは現実的に許容できるレベルの極めて低い水準未満の発生確率に抑えられている)場合、健全な運営がなされている、つまり、AIガバナンスがしっかりしていると判断する一つの材料になるでしょう。
でも思いませんか?要素が多すぎて、目が散るなあ、と。もちろん全部が大切なことなのでクリアすべきではあるんですが、複雑であるほど、なんだか難しいもの、一部の賢い人(いわゆる有識者)がうまくやってくれるでしょ、という当事者意識の欠如の温床になる気がしてるんですね。
ここで、年金ガバナンスで触れた"当事者意識の醸成"、これが効いてくるんですね。
年金は従業員と企業という分かりやすい登場人物(*3)です。それに比べると、AIはあまりにもマルチステークホルダー。しかし、必ずユーザーというものが存在し、これらは年金の従業員と同様に、制度(AI)への理解度は非常に玉石混合。だからこそ、健全なAI活用、AIガバナンスの考える上でユーザーの"当事者意識の向上"がカギになると考えます。
AIはリスクも大きく、脅威になり得ます。だからと言って、十分に倫理を学んでから触りましょう、というのはなんだか近寄りがたく当事者意識を養いにくいと考えます。AIをこれから活用したいと思っている人が、その技術や脅威についてアクセスできる環境を整えること、現在すでにAIを活用している方が必要な情報や多くの事例などにアクセスしやすい環境を整えることが、当事者意識を持ったユーザー数の増加につながり健全なAI活用ができるのではないか、と思います。
もっともユーザー数の増加が悪意のあるユーザーの参入を生みますが、それを上回る善良なユーザー数の増加により、適切な対策ができるようになり、最終的には健全な運営に資すると信じています。
(*3)実際はもっと複雑な登場人物で、そんなことは全くないんですが、究極的には会社が従業員にちゃんとお金を払えればそれで完結します。



