はじめに

6/17(水) 19:00~開催の    CDLE MeetUp@名古屋    に参加してきました!
いや~行ってよかったです。企画・運営頂いた皆様、ありがとうございました!!

内容

LT→懇親会

《LTの感想》

JDLA 藤吉理事

特に印象に残ったのは、自分が作った資料をAIが代わりに説明してくれるという「AI教師」の仕組みです。
プレゼンテーション資料や研究ノート、社内ドキュメントを作り終えたとき、私たちはそれを読み手に委ねますが、現実には渡した資料が十分に読まれることは稀です。
細部への質問が後から飛んでくることの方が多いかもしれません。論文PDFをベースに言語モデルと対話しながら内容を把握するという実践も、研究室での日常になりつつあり、優秀な学生のようだと紹介されておりました。これは研究者に限った話ではないと思われます。この仕組みは、研究室の枠を超えて、広く世の中で役に立つ技術であるように感じました。

今回ご紹介頂いたのは「あの説明、どの資料にありますか?」という所謂検索に関わる部分のみでしたが、説明についてもできるのかなと個人的には感じております。
特に、自分で作ったスライドは往々にして、頭の中にある文脈に頼りすぎていて、説明が省略されがち(私がやりがち)ですが、RAGチャットボットは、テキストに書かれた言葉だけを根拠に回答するため、資料に書いてある内容を過不足なく言語化してくれます。
そのため、チャットボットのほうが忠実かつ再現性が高いことさえあるかもしれません。

株式会社NAGARA 岡田さん

特に印象に残ったのは、RAGの仕組みを現実的な困りごとに落とし込んで、介護の現場で採用に至っているというその実現性です。

介護士が利用者と話しながら普段通り声を発するだけで、介護記録・報告書・議事録をAIが自動で生成するサービスです。議事録AIなどは業務で使うこともあるのですが、その仕組みが介護に応用できるとは考えたこともありませんでした。音声入力というUIの選択が秀逸で、ITに不慣れな現場スタッフでもワンタッチで使い始められる設計になっており、話す=記録が終わる、という発想の転換は問題への直接的な回答ではないかと思われます。

ただ、個人的に最も面白いと感じたのは記録機能そのものより、その先にあるAIエージェント機能という部分です。ながらかいごを使い続けるだけで、その介護施設に最適化されたAIが自動構築されていくとされています。日々の記録・介護計画・会議の議事録が蓄積されていくにつれて、AIが参照できる知識の厚みが増していく自律性が非常に興味深いですね。

研究者が論文PDFをベースに言語モデルと対話するのと、介護士が施設固有の記録をベースにAIに質問するのは、技術的には同じ構造を持っていると思いますが、ながらかいごの秀逸な点は資料をわざわざ準備する必要がなく、日常業務の中で自然と知識が蓄積されていくという点ですね。使えば使うほど賢くなるというフレーズは乱用されがちですが、RAGにおいては参照できるデータが増えるほど回答の根拠が厚くなるという意味で、ここでは素直に成り立っていると思われます。そして、利用者ごとへのチューニングもいずれできるのではないでしょうか?
LTの形式も本番のピッチさながら、温度感に引き込まれました。よい熱を受けたなと感じます。

たまちゃん さん

AIに関して、「人」に関する悩みは尽きません。毎日痛感します。
一言だけ目の前の方に伝えてください、と仰って頂いたのに、気づいたら皆さんご自身の考えを明確に語っており、こんな考え方もあるのかと見識が広がりました。
短いながらも鮮烈でした。

土橋さん

一度「推しバース」についてはStation AIで講演を拝聴していました。
当時のエッジの効いた熱量と比べると、かなりマイルドというか、ビジネス寄りの落としどころに着地させていた印象を受けました。(あとでご本人とも話させて頂きました。)

何度目の来訪かによって話題や距離感を変えるには、記憶検索の精度が不可欠ではありますが、いかにそこでAIを表に出さないようにするか?が難しいですね。
画面の向こうに人がいると錯覚させるというか、作り物だとわかると冷めてしまう人間の原始的な感覚を、いかに隠して没入させるかという難しさがあります。やりすぎるとそれはそれで問題視されそうですし...

市町村の観光事業と連携するなど、拡張余地は大きいように感じます。

Toriさん

AIの使用ガイドラインはかなり厳しく設定されておりますが、そんな中で若い才能に適切にAIを使ってもらうためには、見守る立場の方がしっかり学び、ハーネスを管理していくことが重要なことだと再認しました。そして若い才能というのはやはり素晴らしいものです。

新年会のLTではマナビDXクエストに関して拝聴し、今回の話を聞いて改めて調べたところ...

image.png 38.35 KBバックオフィス系あるじゃん!となっており、一人で勝手にやる気スイッチが入っております。
経験者の皆様、どのような進み方をしていくのかご存じな点をご教示頂けると大変ありがたいです!

座禅いぬさん

広島からはるばるお越し頂けました!

これまでAIとの対話において、ペルソナ情報とは「毎回与えるシステムプロンプト」に過ぎませんでした。セッションをまたぐと記憶はリセットされ、AIは毎回「初対面」の状態から始まります。この構造的限界が、AIを真の知的パートナーではなく「使い捨ての対話相手」に留めてきた根本原因でした。

この問いへの実践的な回答として、OBSIDIANを軸とするアーキテクチャが挙げられます。

Obsidianはもともと、Markdownファイルをローカルに保存するノートツールです。しかしMCP(Model Context Protocol)の普及により、その位置づけが根本的に変わりました。AIエージェントがOBSIDIANのvaultを直接読み書きできるようになったことで、OBSIDIANは人間のためのメモ帳からAIエージェントの長期記憶基盤へと転換できるようになったのです。

特筆すべき構造として、vault内に以下のような統治ファイルを置く設計が定着しています。

USER.md:使用者の専門性・価値観・コミュニケーション上の好みを記述する「自己定義ファイル」
AGENTS.md:AIがvaultをどう扱うかを規定する「操作マニュアル」
CLAUDE.md:セッション開始時にAIが最初に読む「起動ファイル」

これらは単なる設定ではなく、セッションをまたいで積み上がる自己記述として機能します。AIは毎回これらを読むことで、過去の文脈・判断・学習を引き継いだ状態で対話を開始できます。

ペルソナ情報のあり方も、2026年を境に大きく変化しています。研究・実装の最前線では、ペルソナを単一の静的テキストではなく、複数のアンカーに分散した構造体として設計することが標準になりつつあります。

arxivに発表された soul.py アーキテクチャは、エージェントのアイデンティティを6つのファイルに分散して保持します。SOUL.md(不変の核)、MEMORY.md(記憶ログ)、PROCEDURES.md(行動手続き)、SALIENCE.md(重要度マーカー)、RELATIONS.md(関係情報)、IDENTITY_HASH.md(整合性検証)です。この分散設計は、人間の記憶が複数のシステム(エピソード記憶・手続き記憶・感情的連続性)に分散しているのと同じ原理に基づいており、一部の記憶が失われても自己の連続性が保たれる耐障害性を持ちます。

こうしたペルソナを適切に育てると、単なる「高機能ノートツール」でも「便利なAIアシスタント」でもない、自分自身の認知構造を外部化し進化させ続ける自律システムが成立することになります。

具体的には以下の循環が想定されます。

1.対話で得た洞察がvaultに書き込まれ、ペルソナ情報が更新される
2.更新されたペルソナ情報が次のセッションのAIの振る舞いを変える
3.変化した振る舞いが新たな洞察を引き出し、再びvaultへと還流する

OBSIDIANのナレッジグラフが思考の地図であるとすれば、ペルソナ情報はその地図を誰の視点で読むかを規定する座標です。両者が連動することで、知識は単なる蓄積ではなく自己と不可分な文脈を持つ生きた構造体となります。

ただし、当然ながら欠点もあります。
現状の実装における最大の未解決問題は、ペルソナ情報の「劣化」と「ドリフト」です。セッションを重ねるごとに情報が蓄積する一方、古い記述が新しい文脈と矛盾しはじめるるのです。我々は様々な経験により価値観を変え、変化成長していきますが、その変化に追いつけなくなるのです。停滞と呼ぶのが妥当ですかね。
しかし、ペルソナ情報を「いつ・何を根拠に更新するか」の判断基準は、まだ設計論として確立されていません。学習と変質の境界線、他者から見たペルソナとの乖離の扱い、複数の役割や文脈を横断するペルソナの統合など、まだまだ発展余地はたくさんあります。

私自身も、SNSや普段の言葉選び、姿勢などから個人が大切にする価値感を再形成する「認知的リバースエンジニアリング」という名前を勝手につけて勝手に調べています。
人をどうAIが翻訳し、その情報を悪用せず役立てていくか?はホットトピックになっていく気がしますね。需要もあるでしょう。(SNSのいいねの傾向や言葉選びからその人の価値観や人生経験をリバースエンジニアリングすることは悪用できそうだな~と思います)

《懇親会の感想》
LTだけでも非常に濃密でしたが、そのあとの懇親会では、多様なバックグラウンドの方とAI含む雑談の時間でした。
新年会やアイデアソンなど、以前お会いした@カガミ さんや@西村真人 さんともお話しでき、非常に有意義な時間でした!
いつかLTさせて頂く側になれるよう、精進あるのみですね。

おわりに

皆様の話の交差点を考えると、人が行ってきた事柄、足跡を記録し、役立てるという点は共通しているのかなと思います。その過程で倫理的な面や難しさが問われるのでしょうね。

あとobsidianは便利ですのでぜひご利用ください。
自分のアイデアをメモしておくと、3か月前に植えた種と今の自分の思い付きを勝手にネットワークとして紐づけてくれたりします。紙のメモも素晴らしいですが、こうした時系列管理やネットワークとしての把握はどうしても難しいというデメリットがあります。

また、マナビDXクエストにお詳しい方がいらっしゃいましたら、ご助言いただけると大変うれしいです。

企画・運営頂いた皆様ならびに、お話頂いた皆様、素晴らしい時間をありがとうございました!