〜AI共創社会、学びが日本の実装を加速させる〜

2026年3月19日(木)、大手町プレイス ホール&カンファレンスで開催された「JDLA Connect x CDLE All Hands 2026」に参加してきました!

今回のテーマは、
「AI共創社会、学びが日本の実装を加速させる」。

会場には、AIの研究者、企業でAI活用を進める方々、教育・人材育成に関わる方々、そして全国のCDLEメンバーが集まり、まさに“AIを学び、使い、社会に実装していく人たち”の熱量が詰まった一日でした。

講演を聞くだけでなく、ワークショップで議論したり、セッション後に参加者同士で話したりと、リアルイベントならではの刺激がたくさんありました。

この記事では、特に印象に残った「基調講演・トークセッション」「Session 1」「Session 2」「AIガバナンスワークショップ」を中心に、参加レポートとして振り返ります。

基調講演・トークセッション
「AI共創社会へ、日本の展望」

スクリーンショット 2026-06-15 202329.png 934.02 KB基調講演・トークセッションでは、AIの急速な進展を踏まえ、日本がこれからどのようにAIを社会実装していくのかについて議論が行われました。

印象的だったのは、AIを単なる効率化ツールとしてではなく、社会や産業の構造そのものを変える存在として捉える視点です。

生成AIやAIエージェントの進化によって、企業活動の中で自動化・高度化できる領域は今後さらに広がっていきます。一方で、AIを導入すれば自然に成果が出るわけではありません。

AIを使いこなす人材、業務プロセスを再設計する力、組織としてAI活用を受け止める文化。
これらがあってこそ、AIは本当の意味で価値につながるのだと感じました。

また、AIの社会実装が進むほど、ガバナンスや安全性、説明責任も重要になります。技術の進化を止めるのではなく、リスクを理解しながら、社会の中でどう活かしていくか。このバランス感覚が、これからの日本に求められているのだと思います。

基調講演を通じて強く感じたのは、AI共創社会をつくる主役は、研究者や大企業だけではないということです。現場で課題を見つけ、学び、手を動かし、周囲を巻き込みながら実装していく一人ひとりが、AI社会を前に進める存在なのだと感じました。

Session 1
知能と身体が融合するAGI
― ロボット基盤モデルがカギとなる

スクリーンショット 2026-06-15 202429.png 297.07 KBSession 1では、AIとロボットが融合する未来について議論が行われました。生成AIの進化により、テキストや画像、音声を扱うAIは急速に発展しています。一方で、ロボットは現実世界の中で動き、物体に触れ、人と関わりながらタスクを実行する必要があります。

この「身体を持つAI」をどう実現していくのか。その鍵として語られたのが、ロボット基盤モデルやフィジカルAIの考え方でした。

セッションでは、ニューラルネットワークとロボットを組み合わせた研究の流れ、基礎研究から社会実装へ進むための課題、データセットやモデル整備の重要性が紹介されました。

また、アバター研究の歴史や、教育・福祉・コミュニケーション領域におけるロボット・アバター活用の可能性も語られました。

特に印象的だったのは、日本にはロボットを社会に受け入れやすい文化的土壌があるという点です。日本では、漫画・アニメ・生活文化の中で、ロボットを比較的身近な存在として受け入れてきました。この感覚は、医療、介護、教育、サービス業など、人とロボットが協働する場面で大きな強みになる可能性があります。

一方で、社会実装には課題も多くあります。ロボットはソフトウェアだけで完結せず、ハードウェア、現場データ、安全性、コスト、投資回収まで考える必要があります。技術的には進んでいても、実際の現場で使われ続ける仕組みにするには、段階的な導入と現場との協働が欠かせません。

AIが知能を持ち、ロボットが身体を持つ。その先にあるのは、人間の仕事を単純に置き換える未来ではなく、人間の能力を拡張し、より豊かな社会をつくる未来なのだと感じました。

Session 2
AI人材育成の最前線
― 個の学びは、企業の競争力につながるのか

スクリーンショット 2026-06-15 202529.png 428.35 KBSession 2では、AI人材育成をテーマに、企業における実践事例や課題が共有されました。

議論の中心にあったのは、「個人の学びを、どのように組織の競争力につなげるか」
という問いです。

AIを学ぶ人が増えても、それが個人の資格取得や自己研鑽だけで終わってしまうと、組織変革にはつながりません。一方で、学んだ人が社内で実践し、周囲を巻き込み、業務プロセスを変えていけば、個人の学びは企業の競争力に変わります。

セッションでは、AIスキルを可視化するためのキャリアラダーや、知識・経験・プロジェクト実績を軸とした評価の考え方が紹介されました。ただし、多くの企業では、AIスキルを人事評価や昇進基準に明確に反映する仕組みが、まだ十分に整っていないという課題も共有されました。

また、AI活用を組織に広げるうえでは、単に利用回数や削減時間を測るだけでは不十分です。AIを活用した知識共有、他の社員への支援、業務改善への貢献といった、数字に表れにくい活動も評価していく必要があります。

特に興味深かったのは、AIアンバサダー制度の事例です。各部門からAI活用を推進する人材を選出し、ビジネスケースの作成、準備、実装、成果発表までを一連の流れとして運用する取り組みが紹介されました。

AI活用は、情報システム部門や一部の専門部署だけで進めるものではありません。現場の業務を理解している人が、自分たちの課題を起点にAIを使ってみる。その成果を社内で共有し、経営層や情報部門も巻き込みながら広げていく。このような実践の積み重ねが、企業全体のAI活用力を高めていくのだと感じました。

また、ベテラン層への1対1支援や、実際にメリットを体感してもらうトレーニングの重要性も印象に残りました。AI活用は、若手や技術者だけのものではありません。むしろ、業務知識や現場経験を持つ人がAIを使えるようになることで、組織の暗黙知が大きな価値に変わる可能性があります。

AIガバナンスワークショップ
笑顔の謝罪会見

スクリーンショット 2026-06-15 202625.png 255.6 KBこのワークショップは、東京大学の江間有沙先生、大阪大学の工藤郁子先生がファシリテーターを務める、40名限定ののグループワーク形式の体験型プログラムでした。

題材は、「炎上したAI就活サービスへの対応」。

参加者はそれぞれ異なる立場を持ち、他の参加者と交渉しながら、問題への対応方針について合意形成を目指します。

テーマとして扱われたのは、AIのバイアス、情報非対称、説明責任、責任分界、ステークホルダー間の利害調整など、AIガバナンスの実務で避けて通れない論点です。

実際にやってみると、これがかなり難しい。「正しいこと」を言うだけでは合意はできません。企業、利用者、学生、開発者、社会、メディアなど、それぞれの立場によって重視するものが異なります。

たとえば、サービスを早く再開したい立場もあれば、原因究明を優先したい立場もあります。利用者への説明を重視する立場もあれば、企業としての法的リスクやブランド毀損を気にする立場もあります。AIの公平性や透明性をどこまで担保するのか、誰がどこまで責任を持つのかも、簡単には決められません。

このワークショップで印象的だったのは、AIガバナンスは「ルールを知っているかどうか」だけではなく、「関係者の間でどう合意をつくるか」が非常に重要だということです。

AIの問題は、技術だけで完結しません。データの偏り、モデルの判断、ユーザーへの説明、社会的な受け止め、企業の意思決定、メディア対応など、さまざまな要素が絡み合います。

そのため、AIガバナンスを実務で進めるには、技術・法務・事業・広報・経営・利用者視点をつなぎながら、現実的な落としどころを探る力が必要になります。

終了後の解説と対話を通じて、ワークショップで起きた交渉や判断を振り返ることで、理解がぐっと深まりました。講義で学ぶAIガバナンスとは違い、自分が当事者として意思決定に関わることで、論点の難しさと重要性を体感できる時間でした。

AIガバナンスというと、少し堅いテーマに聞こえるかもしれません。しかし、実際には「AIを社会で安心して使うために、関係者がどう向き合うか」という、とても実践的で身近なテーマなのだと感じました。

CDLEワークショップ #1
製造業向け異常検知デモ by しぶちょーさん

DSC_6032.jpg 14.77 MB画像を用いた異常検知を題材に、ディープラーニングのモデル開発を体験しながら、AI活用の考え方と可能性を学びました。静岡県で実施した「体験型AIセミナー」の内容を紹介いただきました。

CDLEワークショップ #2
AI駆動経営デモ by 座禅いぬさん

DSC_6040.jpg 15.65 MB製造業の品質課題を題材に、AIエージェントによる議事録分析、データ検証、改善提案、スライド作成をライブで実演し、「AI駆動経営」のリアルを解説いただきました。広島県で実施したハンズオンのデモの内容を紹介いただきました。

CDLEワークショップ #3
Security for AI by 河田 雄貴さん, NAOさん, akio uekiさん

DSC_6062.jpg 18.13 MBAIエージェントによる攻撃シナリオ診断のデモも実演していただきました。また、AISIがOSSとして公開した「AIセーフティ評価ツール」を紹介し、実際に使って得られた知見を共有していただきました。

CDLE All Hands

DSC_6120.jpg 16.29 MBChatGPT Image 2026年6月15日 20_22_03.png 2.14 MB
CDLEの仲間とわいわい懇親会をしました。途中、松尾豊先生も飛び入りでご挨拶いただき、大変盛り上がりました。

参加して感じたこと

「AI共創社会、学びが日本の実装を加速させる」というテーマは、今回のイベント全体を通じて、とても実感のある言葉でした。AI共創社会は、一人ひとりが学び、試し、実装し、共有することで、少しずつ形づくられていくものだと改めて思いました。

今回のイベントは、AIの最新動向を知るだけでなく、自分自身がどのようにAI活用に関わっていくのかを考えるきっかけになりました。これからも、学びを止めず、現場で手を動かし、CDLEコミュニティの中で知見を共有しながら、AIの社会実装に貢献していきたいと思います。

参加された皆さま、登壇者の皆さま、運営の皆さま、ありがとうございました!