11月16~19日にパシフィコ横浜で行われたET&IoT 2021に見学に行ってきました。「エッジテクノロジーは次なるステージへ」がテーマで、多くの企業がエッジAIの展示を行っていました。組み込み分野は消費電力や物理的な大きさなど、様々な制約条件があるので、AIの学習のようにGPUの独壇場という訳にはいかず、依然としてCPU、GPU、FPGA、ASICが混沌としていて、未だ勝負はついていない状況です。

今回私がET展に行った最大の目的は、ET展の中でRetail AI EXPOが行われたからです。今回はPreviewということで、これをきっかけに今後は単独でRetail AI EXPOの開催を目指しているそうです。リテール業界では以前からPOSデータの解析でデータサイエンスやAIが活用されてきましたが、最近私が注目しているのはレジカートです。

レジカートは九州のスーパーであるTRIALが開発したもので、お客さんが商品をカートに入れる際に、自らバーコードをスキャンすることで会計が済み、レジに並ぶ手間が省けるというもので、買い物客の利便性だけではなく、カートに付いているモニターに広告を出したり、クーポンを出したり等々、買い物途中のお客さんに新しいマーケティング施策を行うことが出来ます。

レジカート自体は数年前からTRIALで利用されていて、私も何度か利用したことがありますが、最近注目している理由はAIの発達により自然言語処理など時系列の処理が高度に出来るようになったからです。従来のPOSではお客さんが買った数十点の品物をレジで一気に処理するので、どういう順番で買ったかは分かりません。しかしレジカートでは品物をカートに入れた順番が分かるので、買い物の時系列情報を活用したAIのレコメンデーションの可能性が広がるのです。

例えばにんじん、ジャガイモ、玉ねぎをカートに入れたお客さんがいたら、カレーを作るのか、と推測してカレールーのクーポンを出したり、あるいは「にんじん、ジャガイモ、玉ねぎ」からGPTのような生成モデルを使って新たなレシピを作り出して提案したり出来るかもしれません。

買い物客はスーパーに来た時に買うものの2割しか事前に決めていないと言われており、残り8割は店頭で目にしたものを衝動買いしています。レジカートを活用して買い物中の時系列分析を行うことで、買い物客の頭の中の「物語」を分析したり、「物語」を変えさせたりして、より単価の高いものや、より多くの品物を買ってもらう可能性が出てきます。店に設置された多数のカメラとも連動すれば、一旦手には取ったけれど、棚に戻したものなども含めて「買い物物語」を分析することが出来、ますます可能性が広がります。

AIの時系列処理の進展とレジカートの普及によって、リテールの現場が大きく変わる可能性があり、目が離せません。個人的にも買い物客の「物語」を変えさせる方法をいくつも考えているところです(内緒ですが)。みなさんも是非一度店頭でレジカートを利用して、考えてみてください(東京近郊にもレジカートが利用出来るTRIALの店舗があります)。